株式会社正栄組 様

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株式会社正栄組 様

今まで「やろう」と思いながらも、なかなか実行できなかったことが、前向きな意識で 取り組めるようになってきました。

事業内容

建設業(ハツリ工事業)
解体工事
産業廃棄物収集運搬
ワイヤーソー工事

資本金

1,000万円

従業員数

40名(2012年時点)

所在地

岡山県岡山市北区金山寺4-1

CREDO – 私たちの信条 –

私たち正栄組は、最良品質の斫り(はつり)・解体工事を通じて、お客様への高い満足と、 地域の皆様が安心して生活できる環境創りに貢献することを使命とします。

私たちは、お客様から「任せて大丈夫だ!」と言われる関係を築き、柔軟な対応力と他社にはない技術力をもった豊富な人財で、 環境に考慮した安全で迅速丁寧な工事の提供をお約束します。

私たちは、お互いを信頼し、知恵と技術を出し合い、 『あふれる笑顔』で正しく栄え続ける会社を目指します。

(2011年12月 完成)


「環境に優しく」「安全」「ハイクォリティー」な斫り(はつり)・解体工事で笑顔溢れる暮らしに貢献している正栄組。
その代表である楢村さんにクレド導入についてお話を伺いました。

―まずは楢村社長。株式会社正栄組の事業を紹介して下さい。

当社は、コンクリートの斫り(※)と解体工事、及びそれに付随する工事を行っている会社です。

※主に建築現場で、コンクリート(橋や道路、ビルやマンション、一般住宅で使われているコンクリートのすべてを指します)の壁や 土間などの構造物を壊したり、形を整えるために削ったりする作業全般を指します。

具体的な業務内容としては、コンクリートの斫り(はつり)工事全般、建造物のリニューアルや耐震補強工事に伴う解体工事、コンク リートの切断、産業廃棄物(自社が施工したものに限る)の収集運搬、民家の解体工事などを行っています。

現在は建物を補強したり、耐震性能を高める為の工事が主流になってきています。また、耐用年数が過ぎた建物を一旦解体し、新しい 建造物を建てていくという需要も出てきています。その中で当社が目指していきたいのは、「安全性の追求」と「専門分野を徹底的に 極める」ことです。お客様の評価にゴールはありませんから、そういったことを先進的に取り組んで高めていきたいと考えています。

今現在のお客先はゼネコン主体ですが、今後はより個人のお客様と直接お取引できるようにお客先を広げていきたいですね。 そういう形で幅を広げて、当社の発展に繋げていきたいと考えています。

1. 導入前

一つひとつのことをしっかりと継続し、積み重ねていける会社になっていくために皆の意識が揃う“何か”をしたいと思っていました。
クレドを知ったきっかけ
~楽しみややりがいを見出すツールとしてのクレド~

―楢村社長が「クレドミーティング」を知ったきっかけを教えて下さい。

オーディーエルさんからの情報提供で「クレドミーティング」を知ったのがきっかけです。 「クレドミーティング」を知る前に、オーディーエルさんからは「選択理論心理学」(※)を学んでいて、 色々な情報提供をして頂いていました。そうした中で「クレドミーティング」を知り、「これはいいな。」と思いました。

選択理論心理学‥‥ アメリカの精神科医ウィリアム・グラッサー博士が提唱によって提唱された、脳の働きを土台として”人はなぜどのように 行動するか”を説明した心理学。 より良い人間関係を築く方法として高い評価を得て、カウンセリング、学校教育、組織構築、家庭など様々な分野で用いら れている。発表以来約40年間経ち、世界各国で拡がっている。

楢村社長

―「クレドミーティング」のどんな点が「いいな」と思われたのですか。

うちの会社がそうというわけではないんですが、会社の中の問題として“やらされている感”を持って仕事をしている 状態があるのは良くないなとずっと思っていました。「やらされている仕事」は非常に辛くて、しんどいし、人の人生の 大半の時間は仕事に費やされるにも関わらず、そういった感覚で毎日を過ごしていたらきっと面白くないだろうなと常日 頃感じてました。

そうした思いを払拭し、何か楽しみを見出して自発的に取り組める仕事であれば楽しみややりがいが生まれてくるんじゃないかと思ったんです。それを作り上げていく手法としてクレドは最適であると思い、やってみたいと思いました。

クレドへの期待

―クレドによって解決したいと思われていた課題はありましたか。

当社は、斫り(はつり)や解体を行っている会社の中では珍しい取り組みをしている会社です。

例えば、ISOの取得や、 安全性を高めるための安全版のISOのようなマネジメントシステムなどをいち早く導入したり、とにかく新しいことに取り組んでいくことを私の発案でやっています。この取り組みは私が社長に就任してからずっと行っているものです。

社員からすれば面倒臭いことをさせられていると感じている人もいるかもしれませんが、結局とてもいいことだし、皆一生懸命に取り組んでくれるのでその点はいいのですが、私も含めて、長く続かない所が問題というか・・・。

全体的に熱くはなるのですが冷めるのも早い面があり、いつの間にか「やらなくてもいいか」という雰囲気になってしまう傾向がありました。しばらくすると「このままじゃいけない!」と気付いて、取り組むんですけど、またそれがシューとしぼんでしまって・・・、そういうことの繰り返しでした。

「どうやったら、一つのことをしっかり継続して積み重ねていけるのだろうか」ということをずっと考えていました。

―「クレドミーティング」がその問題を解決する為にどのように役立つと思われましたか。

楢村社長:「何のためにそれをするのか」という目的をはっきりさせて 全社員が共有できたら、一つのことを継続して取り組んでいく原動力になると考えました。そのためのツールとしてクレドは最適だと感じました。

今まではただ「やること」だけに焦点をあてがちだったので、途中で面倒くさいと思ったり、やらされていると感じたり、サボりたくなったりする気持ちがどうしても出てしまったと思うんです。じゃぁそれを「何のためにするのか」ということをはっきりさせて全社 員が共有できたら、継続して取り組んでいく原動力になると考えました。

社員が思いを一つにできる会社の基準が一つあって、その延長線上に個人の目標があり、それが近かったり、重なったりすると更にモ チベーションが上がる。今までだったら面倒臭くてさぼりがちだったことも、向う先が明確であれば「そうだ。このためにやっている んだ。頑張ろう。」という意識に繋がる。そういった考えから、皆の意識が揃う“何か”がしたいと思っていました。

そうした中、「クレドミーティング」を知り、社員の信条である「クレド」(会社、社員が目指すもの)と、その「クレド」を具体的 な行動に落とし込んだ「クレドベーシック」(行動基準)は、今まさに当社が必要としているものだと感じました。今までは社長の私 が取り組みを発案していましたが、「クレド」は社員のものです。

社員が自分達の向かっていく先を考えて、行動を決めていく。自分達が良くなっていくために、自発的に取り組める仕事であれば、楽しみややりがいの幅も広がるんじゃないかと思ったんです。

オーディーエルさんの「選択理論心理学」とあわせて、当社が抱えている問題が「クレド」で解決できるのではと期待を持ちました。

クレド導入までの道のり ~様々な問題を乗り越えて1年がかりで導入~

―オーディーエルから情報提供があった後すぐに導入を決められたのですか。

いいえ。導入に踏み切ったのはそれからちょうど一年後のことです。というのも、「クレドミーティング」体験セミナーに参加した時はちょうど、リーマンショックの後くらいだったんです。そのため、「いいな」とは思ってたんですが、「すぐにうちの会社で!」 という風には思えなかったのです。

理由の一つが「費用と時間」の問題でした。経済状況もあまり良くない中、「クレドミーティングに時間と費用をそんなにかけれるのだろうか」ということが非常に心配でした。

もう一つは、仕事が低迷していたこともあり、会社の中もなかなか楽しい雰囲気にならないということがありました。新しいものを取 り入れていく時はモチベーションを高く始めたいという思いがありました。「こんな忙しい時に何するん?」というようなネガティブな思想から始まるとまずいなと思っていたからです。そのため、きちんと環境を整えて、「今なら!」というタイミングを見ていまし た。そうして、一年後に経済的にも仕事的にも環境が整って導入に踏み切りました。

熱心にオーディーエルさんがお声がけ下さっていたのも大きかったですね。それがなければ、もっと導入が遅れていたかもしれません。

―クレド導入前に何か準備されたことはありましたか。

オーディーエルさんから「エグゼクティブクレド(経営者のためのクレド)公開講座」の案内を頂いて、まずは経営者である私自身のクレドを作成することにしました。参加しようと思ったのは、社員にばかり求めるのではなく、まずは自分が作って、社員に示してみようと思ったからです。

―「エグゼクティブクレド公開講座」の内容と参加された感想について教えて下さい。

エグゼクティブクレドは、業種も会社も違う経営者が4・5人集まって、「経営者として部下と上手く付き合い、お互いに良い成長を していくための基本行動(10項目)」【※クレド(信条)は個人ごとに作成、クレドベーシック(基本行動)は全員 同じ内容】をまとめるというものでした。最初は「職種も違い、性格も違う人物が集まって話し合いをして、きちんと内容がまとまるのか」と思っていました。これは講座の時だけでなく、普段、経営者の方と話す時にいつも思うことなんですけど、不思議なことに結果を 見るとまとまるんですよね。最後に話が行き着くところはいつも「人間関係」に関することなんです。つまり、悩みの種類は様々ですが根本は大体同じ所にあるんですよね。今回この講座に参加して、改めてそのことを実感しました。

―「エグゼクティブクレド」を作ってみての感想はいかがでしたか。

エグゼクティブクレドは「社内に公表して取り組む」のが前提条件とでしたから、内容を決定していくのは私も皆さんもとても勇気 のいることでした。そういう経緯もあって、参加者全員が納得した上で時間通りに「クレドベーシック(行動指針)」が出来上がった時 は「すごい!」と思いました。一項目ずつ皆のコンセンサス(同意)を得ながら進めていくので、まとまったものに納得がいかないということもありませんでした。

中身を改めて見ると、過去に「こうしないといけないよな」と気になりながらも出来ていなかった要素がたくさん入ってるんですよね。

「できるか、できないか」ではなく、「するか、しないか」がクレドなので、完成後は覚悟を決めてすぐに社内に公表しました。公表した時には、今まで思っていても出来ていなかった項目ばかりなので「やりきれるのだろうか」という不安はありましたが、同時に「やるぞ」 という覚悟も決まりました。

楢村社長:「エグゼクティブクレド」は、常に意識できるように、 自身の机の上に置いています。

2. 導入・作成中

自分達の目指す地点や可能性が明確になり、将来の夢や希望が持てる。ここがクレドミーティングのポイントだと感じました。

― 「クレド作成ミーティング」はどのような日程で行いましたか。

「クレド作成ミーティング」は次の日程で行いました。

クレド導入前事前研修
2011年8月22日・9月5日
午前10時~午後4時

※全社員を2グループに分けてそれぞれ1日ずつ実施。
●WANTSの確認
●アクティビティ(体験学習)・・・「協力」
●クレドとは何か・クレドの効果
●仲間同士の「絆」と「結束力」の強い会社とは

1日目
2011年9月20日(火)
午前10時~午後4時

●オリエンテーション
●ハートビーイング(※)の作成
●グループごとに「司会担当」「議事録担当」「時間管理担当」を選出
●会社の現在の課題・理想の職場環境を討論
●「事業価値」をグループごとに討論、発表→全体発表、討論、深堀

※ハートビーイング‥‥話し合いを 円滑に進めていく為に大切にしたいプラスの行動と避けたい・したくないマイナスの行動をディスカッションし、ハートの中にプラ スの行動、ハートの外にマイナスの行動を明示する。

2日目
2011年10月4日(火)
午前10時~午後4時

●「使命」「ビジョン」を班ごとに討論、発表→全体で討論
●「事業価値」「使命」「ビジョン」を再確認、深堀、修正
●クレド(「事業価値」「使命」「ビジョン」)が完成

3日目
2011年10月17日(月)
午前10時~午後4時
4日目
2011年11月2日(水)
午前10時~午後4時

●クレドベーシック(行動基準) 作成開始
●班ごとに討論し一つの答えを導き出す
●ベーシック全体発表・深堀 
●深堀した内容を再検討・修正・再作成作業
●ベーシックの内容を全員で吟味、質問しながら深掘

※クレド作成日5日目に入るまでに、社員が自主的にベーシック原案を作成

5日目
2011年11月14日(月)
午前10時~午後4時
6日目
2011年12月5日(月)
午前10時~午後4時

●グループで作成したクレドベーシック原案を発表
●全員で検討・深堀⇒修正ポイントの確認
●修正ポイントをもとにベーシックをブラッシュアップ→発表
●全員で検討・深堀
●ベーシック全項目完成

最終日
2011年12月19日(月)
午前10時~午後4時

●クレド、クレドベーシックの文章の見直し・修正
⇒あいまいな部分は更に明確化
●今後のクレドマンスリーミーティングについて
・開催日時、クレド推進メンバーの決定
●キックオフの進め方・職場展開の仕方の検討

社員が自発的に取り組む第一歩

―クレドミーティング前の事前研修(全員参加)をご覧になられていかがでしたか。

最初の方は、皆慣れていないので、戸惑うようなところも見えましたけど、案外、話が弾んでいるなという印象 でした。黙り込んで何もしゃべらないとか嫌そうにぽつんとしている社員がいるかなという懸念があったんですが、 そういった社員はいなかったので、良かったと思いました。

また、ディスカッションを通して社員同士がお互いの考えていることや「こういうことが過去にあったけど、あの時はこう思った」など、話しあう機会を設けられたのも良かったです。当社の場合、同じ部署に所属していても担当する現場が全部違う為、社員同士が接する機会が少なく、今までゆっくり話をする機会を設けられていなかったものですから・・。

導入研修の様子:(楢村社長)『導入研修で よかったと思うことは【①社員が集まって、ゆっくりと話し合う機会を設けられたこと→社員同士の距離が近くなった】【②“クレドを 作成する意図”を全員が知り、共有したこと】ですね。』

実はこのことも研修を通じて気付いたことなんですけど、あの場で一日話をすることで社員同士の距離が近くなり、お互いのことを良く知れたんじゃないかなと思います。

もう一つ良かったことは「これからこんなことが始まる」ということを全員が知ったことです。私が一番避けたかっ たのは、一部の人だけが取り組んで、全てが決まった後に「○○が決まりましたから、やって下さいね」と指示を出 すことでした。そうなると関わっていない人は、他人事のようにしか思えないですし、全体の雰囲気も良くない。 浸透させていくのもなかなか難しいですよね。

そういった意味で「クレドを作成する意図」を皆が知って共有できたのは良かったと思います。

―「クレド」の作成は選抜メンバーで行われましたが、どういう所に注意して選抜されましたか。

「推進力がありそうな人」(リーダー格)と「次世代のリーダー」になってくれそうな人を一人ずつは入れるようにしました。後は年代的なバランス(年長者から若手まで)と職種(現場と事務)の調整を行いながら選抜しました。

―クレドミーティングをご覧になられての感想をお聞かせ下さい。

クレド作成に取り組む中では、終盤の「文章をまとめていく作業」にかなり苦労した様子でした。印象的だったのは、 クレドミーティング時間外にも社員がスケジュールを調整して集まり、自主的に話しあって、「何とかこの日までにこれ をまとめる」といった目標を立てて自発的に取り組んでくれたことですね。

今思うと終盤が大きなポイントだったのかなと感じています。

クレド作成風景

①クレドの事例研究や構成要素、作成方法などについて学んでいる風景。

②【クレド作成の準備段階】
現時点での会社の課題や、理想の姿を明らかにして、作成のヒントやキーワードを導きます。

③チーム内で話し合い、意見をしっかりもみながら、キーワードを出したり、文章化していきます。

④【全体発表風景】
チーム内で出た意見を全体発表して、共有。質疑応答しながら深堀し、内容を明確化していきます。

⑤3・4の作業を繰り返しながら、クレドの内容を明確化し、コンセンサス(同意)を得ていきます。

⑥最終的な文章の見直し作業。曖昧な所はないか確認し、あれば修正を行います。今後の進め方についても決めました。

クレドミーティングのポイント

―クレドミーティングのここがポイントだなと思ったことや、よかったことを教えて下さい。

一言で言うと、自分達のやりたいことが明確になり、将来の夢が持てるということですね。

社員が「自分達(自社)のいいところ、良さ」に気付いて、それを集結したら「こんなことになるかもしれない」、 「こんなことができるかもしれない。」というような可能性を見出す。そんな夢や希望が持てる点がクレドミーティングの ポイントだと思います。そういうものが明確になってくると、後はその想いを「どのように達成していくか」、「自分達の足 りないところ」をどのように補っていくかを考え話し合いながら、クレドの内容を詰めていく。具体的な行動を決めるので、 結構難しい面もあるんですけど、「良いところ」がわかって、「こうすればお客様が喜んでくれる」「これは皆から受け入れ られている」ということがはっきりしていれば、そのために一生懸命考えることができるし、思考も前向きになると思いました。

そういった要素を持ってクレドの中身が出来上がっていくので、非常に楽しくやりがいのあるものになるのだろうなと感じました。

―クレド作成中に社員の方(クレド作成メンバー)に変化はありましたか。

一番の変化は自発的に次のミーティングまでに「○○をしておこう」というような目標を決めて前向きに取り組んで くれたことでした。今まで取り組んできたものとは違う動きだったと思います。社員が一生懸命取り組んでくれている姿を見て 「クレドミーティング」は、はまったのかなと思いました。

3. 完成・導入後

当社の課題だった「継続」という部分は今、クリアしていると思うんです。少しずつクレドを達成していくことが大事かなと思っています。
クレドが完成して

―出来上がったクレドをみてどのように感じられましたか。

まずは非常に細かいところまで、良くこんなに作りこんだなという印象を持ちました。もう一つは、私が今まで社員に向けて 言っていたことや会社や社員同士がこうあってほしいなと思っていたことがクレドの中にしっかり盛り込まれていて、私の思いは 皆に通じていたんだなと思いました。気を使って入れてくれたのかもしれないですけど、きちんと伝わっていて嬉しいと思いました。

―楢村社長の思いが伝わっていたことを実感されたのは特にどの項目ですか。

例えば、今までずっとやろうと思っていてもなかなかできなかった象徴的な項目が一つあるんです。 それは、ベーシック1番の「使用後の道具の手入れ」に関する項目です。

1. 私たちが言う最良品質の斫り工事とはスピードだけではなく、斫った後の 「見た目のキレイさ」を言います。そのために斫り作業で欠かすことが出来ない「ノミ」は、従業員一人ひとりが使用 後丹念に叩き、翌日の工事も最良となるよう徹底した手入れを常に行います。

この項目では「ノミ」に焦点を当ててますが、他の道具も同じように使用後は欠かさず丹念に手入れをしようという意味を 含んでいます。そうすることで、自分の仕事の効率や次に道具を使用する人の作業効率も上がるからです。

基本といえば基本に感じるかもしれませんが、「当たり前のことを当たり前のように皆ができる」、これがなかなか難しいんです。 手入れに関して、社員一人ひとりの考え方が違ったり、出来ている人・出来ていない人の差もあったので、皆がこの項目を出来だ したら、自分達が理想とする組織や仕事のやり方が確立し、その先の目標も達成できる、そういうイメージで作ってくれたのだろ うと思います。

クレドベーシック1番の項目の「ノミを叩く」様子

後は、後半部分ですね。特にベーシックの12・13番の社内の人間関係や結束力を高めるための項目です。

12.私たちはいつもお互いを尊重し、チームワークを大切にしています! 仲間同士の強い「信頼関係」と「絆」で結ばれた仕事を遂行していくためには、普段からの互いの気持ちや仕事の 状況を配慮したちょっとしたプラスワン行動が大切と心得ています。私たち正栄組従業員は自分の仕事だけを考えているのではなく仲間の仕事の様子にも関心を持ち、「何か困っていることはないか「「何か手伝えることはないか」 など気配り、心配りの声掛けを忘れません。

13.私たちは仲間同士の質の高いコミュニケーションを目指しています! そのためには良いことも悪いことも何でも話せる環境を整えておくことが重要と考えます。人の話は話し手の目を 見て腰を折らず最後まで聴き、時には自分の理解のしかたも確認し、正しい受け取り方・理解を心掛けます。また 自分の意見を話す時は結論を先に、そして理由・事例を簡潔に述べ、感情的にならず互いに納得し合えるような話し合いを目指します。

この文面を見て私が日頃言っていた話、例えば「人間関係がいいと、いざとなった時に力が集結して、困難な ことを皆で乗り越える機動力や瞬発力が生まれる」といったことがきちんと伝わっていて、彼らなりに一生懸命 まとめてくれたんだろうなと思いました。

この項目を達成することで会社や皆が良くなっていくと考えてくれていたんだと思い、とても印象的でした。

会社(社員)の変化 ~無意識の状態から、意識を持って取り組む状態に~

―クレドができて変わったなと思うことがあれば教えて下さい。

まずは、皆の意識が変わりましたね。 具体的に行動できていると感じるのはベーシックの12~14番。社員間のコミュニケーションに関する項目です。 特に14番は皆意識して行動してくれているなと感じます。

14.私たちの仕事はいつも元気な挨拶から始まり、元気な挨拶によって終業します! 気持ちよく仕事をスタートし、気分よくその日の仕事を終えるために、笑顔で相手の顔を見て、はっきり分かる声で、朝の 「おはようございます。」帰り際の「お疲れ様でした」の挨拶をいつも実践します。

1番も意識がすっかり変わりました。状況によって出来る時、出来ない時(道具を積んだトラックがまだ会社に戻ってきて いない時など)があると思いますけど、「大事なこと」だという意識が定着してきているように思います。『無意識から意識』 を持てるようになったのはすごく大切なことだと思います。 具体的な仕事のやり方もベーシックの中にいくつか入っているんですけど、これは今後のマンスリーミーティングで施策を考 えたり、努力していかないといけないところですね。

―クレドマンスリーミーティングはどのように進んでいますか。

毎月1回、クレド推進委員会のメンバーが集まり、「出来ていること」、「出来てないこと」の確認をしています。そこで 問題点や課題などを挙げて、施策を検討しています。クレドの実行度合いの自己評価は、クレドメンバーだけではなく、当社 オリジナルの【クレド自己評価シート】を全社員に配布し、毎月一回回収して、ミーティングに役立てています。【自己評価 シート】の提案もクレドメンバーが行ってくれたもので、クレドのことを意識するよいきっかけになり、効果的だと思っています。

クレドマンスリーミーティングの様子

また、課題ばかりに目を向けるのではなく、「出来るようになった」ことや良かったことについてもしっかり共有するようにしています。

その他の内容としては、ベーシック7番では、「技術向上」や「教育」のための『勉強会』についての項目もありますので、 勉強会の内容や講師などもミーティングで話し合って決めています。

クレドマンスリーミーティングで決まったことや、【自己評価シート】の集計結果、勉強会の様子などは毎月一回発行する 【クレド通信】(クレドメンバーが作成)で、全社員にフィードバックしています。【クレド通信】では自分(社員)の顔写真やコメントが載っていますから、皆関心をもっていたり、嬉しかったりするんじゃないかと思います。皆が【クレド通信】を知っ てくれている、見てくれていることが大事だと思いますし、「クレド」の存在を感じてくれていることが何より大きな一歩だと感じています。

現場での勉強会の様子

オリジナルの自己評価シート

毎月1回発行のクレド通信

―クレドが出来上がって楢村社長が心がけられていることはどのようなことがありますか。

焦らないことですね。自分自身も全てを完璧に出来ているわけではないので。 大事なのは常にクレドを意識していることだと思うんです。「ちょっと今のまずかったかな。」と思ったら、すぐに切り替えて クレドに即した行動を起こすとか。色んなものにすぐに結果を求めて焦るのではなく、かといって前のようにやめてしまわない ように。

継続という部分では今はクリアしていると思うんです。「クレドが出来たから終わり」ではなくて、「クレド」ができてスタート 地点にたったので、焦らず少しずつ達成していくことが大事かなと思っています。

―クレドの導入や育成への取り組みついて迷っている経営者の方へアドバイスをお願い致します。

経営者の方の悩みを聞いていると最終的に行き着くところは「人間関係」が多いように思います。例えば「組織が動かない」 というのも、元を辿れば人間の組織なので「人間関係」が絡んでいることが多いのではないでしょうか。そういった悩みや問題を 解決していくために私なら「選択理論心理学やクレドに取り組んでみたらどう?」とお勧めします。人間の行動のメカニズムを 知り人とより良く関わっていくために「選択理論」を、社員の自発的行動を促し皆で共有できる価値観や行動指針を作る仕組み作り のために「クレド」をという感じです。

ただ、経営者だけ・社員だけのどちらか一方が取り組むのでは効果がないと思います。全社で一丸となって勉強したり、皆で掲げた 目標を全員で達成していく姿勢が「会社のため、自分達のよりよい生活のため」になるのではないでしょうか。


作成に関わった社員の方にも「クレドミーティング」について伺いました。

総務部:所 左千江さん(クレド実行委員)

クレド作成を通じて、今まで話をしたことがなかった人と話が出来るようになったり、嫌なことがあった時にはクレドの文章を思い出して、気持ちの切り替えが早くできるようになったと感じます。

クレドミーティングが始まった時は、「楽しそうではあるけれど、上手くいくのだろうか・・・」という期待と不安がありました。 実際にクレド作成に入って思ったのは、意外と皆がまじめに考えているんだなぁということと、自分の意見も思っていたより発言で きたということです。私は事務なので、普段、作業員の方と意見交換する場がなく、こういった機会もなかったので「この人、こん なこと考えてるんだ」ということがわかって新鮮な気持ちでした。

長年同じ会社にいても部署が違うと接する機会もないので、分か っているようで分かっていなかったというか・・。クレドミーティングを通じていろんな人とコミュニケーションがとれたこと、 良い面悪い面含めて個人個人の性格が分かったことが、まずは成果だなと思いました。

クレド作成中は、言葉の壁にぶつかり、想いや行動を文章にすることの難しさを実感しました。それから、「やってて当たり前」の 境目を作るのにも苦労しました。「それは出来ているだろう。」「いや、出来ていない。」といった配分、出来ているという人に対 して、「じゃぁ、出来ていない人のためにこの文章を作るのか。」といったかけあいもありました。人によってレベルが違いますか ら、一体どのレベルに照準を合わせるのか。高すぎる行動指針を作っても折れてしまう人が出てくるだろうし、「皆のクレド」だか らそれでは意味がない・・。出来ていない人に対してどうやって働きかけようかということを考え話し合いながらのクレド作りでした。

クレドが出来てからは、皆がクレドの内容を意識した対応、行動をしてくれているように感じます。例えば、何かちょっと] した問題が起こった時や、話し合いの際にマイナスな発言があると「それはクレド的にはどうなの?」というような意見が出るんです。 また、クレドベーシック1番の項目やコミュニケーションに関する項目に関しては、比較的良くできていて、社内の雰囲気が変わった ように思います。

私自身もクレド作りを始めてからは、作業員の方と以前より話すようになりましたし、向こうの方から声をかけてくれることも 増えました。何かを一緒にする体験をしたことで、仲が深まり、コミュニケーションの量も確実に増えたと思います。

クレドの内容は、どちらかというと作業員(現場社員)中心のものだったのですが、途中、メンバーの提案で、事務向けのクレドも追加 で作成しました。こちらも皆意識して取り組んでいるのがわかります。

所さん:事務のクレドが出来て、お互いへの 気配りや助け合う意識が強くなりました。

特に月末月初は忙しいので複数の人が手を止められない状態が重 なった場合は、誰かがそれを察知して電話をとるという気配り・意識は更に強くなりましたね。例えば、「今の時期は○さんは忙しい」 ということを把握して「今日はなるべく私が電話をとるようにしよう!」と考えて行動するようになりました。

私がクレドを通じて一番大きく変わったのは「物事に対する見方」だと思います。他の人の変化や、良い面などは気をつけて見ようと したり、作業員の方が帰社したら明るい声で自分から声をかけてみる・・・など、クレドを継続していく為に自分や相手が心地良く なる職場を意識して取り組んでいます。


工事部 次長 :高橋 幹夫さん
(クレド実行委員)

今回クレドに取り組んで、社員皆で会社を盛り上げていこうという雰囲気や一体感が良かったですね。また、問題があれば、 その解決に向けて皆で考える習慣がつきつつあるので、しっかり確立していきたいです。

最初にクレドについての説明を聞いて、「ああしよう、こうしよう」といろいろ細かいことを決めることは、うちの会社のために なるだろうと思いました。その一方で、今まであまり職人さんとコミュニケーションをとる場や機会がなかったので、上手くクレ ドをまとめていけるのだろうかという不安もありました。

自分はメンバーの中で立場が少し上だったこともあり、クレド作成の際は話しやすい雰囲気作りに努めました。クレドミーティング の1回目に作成した「ハートビーイング」を意識しながら、人の話の腰を折らないようにしたり、皆の意見を訊くことに注力しました。 基本的に社員の仲がいいのがうちの会社の特徴なので、やりやすかった面もあります。

作成にあたって「言いにくい」部分もあると は思いましたが、普段、本音で話してくれる人も多いので、どのように話をまとめていくか考えながら話を進めていくようにしました。しかし、なかなか皆から意見が出ない回もあり、どのように皆の意見を引き出し、中身を具体的にしていくかという面では苦労しましたね。 振り返ると、場面場面で手ごたえはあったと思います。あまり意見を言わない人がふとした瞬間に意見を出してくれたり、意外な人から いい意見が出たり、「この人、こういうこと考え(思い)よるんじゃ。」と思う場面がちょこちょこありました。クレドをやろうとする 皆の意識は見えましたし、全体的な雰囲気もよく、作成が進むにつれて他の社員のやる気が高まっていくのも見えました。

クレドが出来て、結果が出てきていると感じるのはベーシック1番の「使用後のノミを(手入れのために)丹念に叩く」行為です。 この項目については、やる気のない人がいたり、一人が複数人分のノミを担当するなど矛盾していることがあり、「どうすれば皆が やる気になってきちんと出来るようになるのか」ずっと悩んでいました。ですから、今回この内容を盛り込めたのは良かったです。 今ではノミを毎日叩くのが当たり前になってきて、自分が使ったものは自分で手入れする意識・習慣が身についてきました。

コミュニケーションの部分も結構いいことかなと思います。大きい声ではっきりと挨拶をする人が増えています。 車に関する交通マナーの項目は特に若い世代に影響がありました。月に一回の自己評価シートには、自分が苦手な部分や気をつけたい 部分、反省点などについて書いてくれています。自己評価シートにコメントまで書いてくれるとは思っていなかったので、そういった 文章を見ると意識が高まっているのを感じ、嬉しく思います。

また、自分の価値観を押し付けるのではないので、何かあった時に言いやすく(指摘しやすく)なった面もあります。それはクレドが 皆で決めた約束(ルール)というのが大きいですね。社長や上司が決めたのではなく、社員の代表が決めたものなので、皆もその認識 が出来ていて理解してくれています。

今後は、定期的に開催するクレドマンスリーミーティングに一定のメンバーだけではなく、色々な社員を入れながら、話を共有し、 たくさんの人の意見を取り入れてより良いものにしていきたいです。勿論、若い人とある程度の年齢の人とでは価値観が違う面もあ ると思います。クレドで決めたことの話だけではなくその枠を越えて、様々な意見交換をする場としてもミーティングが機能してい けばいいなと思います。

―正栄組の皆様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

[ *取材日:2012年7月 ]